現在関西に設置中「こうのとりのゆりかご」とは?赤ちゃんはその後どうなるの?

現在、関西に設置が進められている、
「こうのとりのゆりかご」は、
別名”赤ちゃんポスト”とも呼ばれています。
こうのとりのゆりかごの仕組みとシステム、
問題点や、その後どうなるかなどを、解説します。
こんばんは!
男性保育士のあつみです。
「こうのとりのゆりかご」の仕組みは、
一般的に”赤ちゃんポスト”とも呼ばれており、
熊本の慈恵病院に設置されています。
どうしても赤ちゃんを育てられない…
そんな深い悩みを抱えた母親から、
赤ちゃんを預かる施設です。
匿名で利用できるため、
モラルの低下などの問題点が叫ばれています。
ただ、利用状況の人数などを見ると、
救われた命もあるという事実があります。
現在、関西での設置が進められている、
「こうのとりのゆりかご」について、
解説していきます。
この記事を書いた人

あつみ先生
保育士/幼稚園教諭/保育教諭|現役8年目|今年は0歳児担任|SNSフォロワー累計17000人↑|見てきた子ども達は250人↑|保育士ライター(MAMADAYS/ほいくらいふ等)|書籍出版「保育製作365日/100均知育365日」|30万PV保育士ブロガー|ピンタレスト月間250万PV|離乳食インストラクター4期卒セミナー講師|詳しいプロフィールはこちら
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■こうのとりのゆりかごとは
「こうのとりのゆりかご」とは、
どうしても赤ちゃんを育てられない、
理由や悩みを持つ母親が、
赤ちゃんを匿名で預ける事のできる窓口の事です。
熊本県熊本市、慈恵病院に窓口があります。
いわゆる”赤ちゃんポスト”と呼ばれるシステム、
日本で存在しているのは、ここだけです。
●こうのとりのゆりかごが生まれた理由と目的
こうのとりのゆりかごの窓口、設備の目的は、
赤ちゃんの命が失われることを防ぐ事です。
何よりも、赤ちゃんの命を最優先した結果、
現在の仕組みが出来ています。[/ふきだし]
★きっかけになった痛ましい新生児遺棄事件
こうのとりのゆりかごが生まれた理由のひとつに、
痛ましい新生児の遺棄事件もあります。
- 18歳の少女が自分の産んだ赤ちゃんの命を奪い、
庭に埋めた事件 - 21歳の学生がトイレで産んだ赤ちゃんを窒息させて、
6年の実刑判決を受けた事件
これらの痛ましい事件も、
設立された理由になります。
どうにか、赤ちゃんの命を、
助けてあげることは出来なかったのか?
何とかしてあげられなかったのか?
出来れば、母親も一緒に救ってあげたい。
こんな思いから、
慈恵病院がつくったのが、
「こうのとりのゆりかご」です。
どうしても育てられない女性が、
最終的な手段として、
赤ちゃんを預ける場所があれば、
救える命もあったのではないか…
と考えたわけですね。
■こうのとりのゆりかごの仕組みとシステム
こうのとりのゆりかごでしている事は、
大きく分けて、
- 赤ちゃんを預かる窓口
- 母親からの相談受付
……の二つとなります。
●赤ちゃんを預かる窓口としての機能
匿名で赤ちゃんを預かる窓口です。
どうしても、赤ちゃんを育てられない…
悩みが深すぎて
悩み抜いた最終手段として、
窓口を利用します。
ちなみに、利用できるのは生後2週間までですが、
2週以降経過した赤ちゃんも、
利用される事があるようです。
こうのとりのゆりかごの窓口まで行くと、
このような、扉があります。
写真は京都府議会HPより引用
窓口の扉の奥には、母親への手紙と、
赤ちゃんを保護するベッドがあり、
そこに赤ちゃんをおきます。
そして扉をしめると、
施錠されてしまい、
扉を開けることが出来なくなります。
赤ちゃんが置かれ、
扉が閉まるとセンサーが反応して、
スタッフ駆けつけて赤ちゃんを保護します。
病院などで検査をして
健康チェックを受けた赤ちゃんは、
病院で入院するか、
児童相談所に委ねられます。
赤ちゃんポストの利用があった事は、
児童相談所、警察署に連絡されます。
ってのも、母親への心理的ダメージ、
ハンパないですね…[/ふきだし]
★こうのとりのゆりかごに対する各所での賛否
8年前の安倍首相が、当時、こうのとりのゆりかごに対して、
「匿名で子どもを置けるものをつくるのがいいかというと、
私は大変抵抗を感じますね」
と言っています。
これに対して、慈恵病院の蓮田委員長は…
「赤ちゃんの命が助かるか、
それとも命をなくすか、
と言う問題の時にはですね、
その出自を知る権利以前の問題がある」
おっしゃっています。
★心中以外の、虐待で亡くなる児童は、年間50人を超える。
心中以外で亡くなる児童の数は、毎年、50人を超えています。
2015年のデータとしては…
虐待によって亡くなった児童は、
50人中、27人が0歳児です。
また、27人のうち、15人が、
生後1日以内に亡くなった赤ちゃんです。
これらの原因のほぼ全てが、望まない妊娠です。
★こうのとりのゆりかごの利用状況について
民間主導で始まったこうのとりのゆりかごに、
2016年3月現在で、125人の赤ちゃんが預けられ、保護されています。
●悩みが深い母親に対しての相談も受け付けている。
「こうのとりのゆりかご」は、
”赤ちゃんポスト”のイメージだけが先行して、
匿名赤ちゃんを預ける所である…と思われがちですが、
妊娠、出産の悩みや、相談の受付も行っています。
慈恵病院は熊本の病院ですが、
特に悩みに悩み抜いた母親から、
全国からの相談が寄せられています。
★こんな悩みを持つ母親が相談を利用している
- 妊娠したかもしれない、
妊娠してしまったけど、
どうすればいいのか分からない - 妊娠してしまったが、
色んな事情があり、誰にも相談できない。 - 赤ちゃんを産んだが、
かわいくない、愛情持てない
育児放棄しそう、虐待してしまうかも - まだ学生だけど妊娠してしまった
- 望まない子どもが出来てしまった
- パートナーに逃げられた
- 出産を周りの人から反対されている
- 妊娠して誰にも言えず、
どんどん育ってきている - 中絶についてどうすればいいのか
- 妊娠したけれど、
育てる自信も環境もなく、
生活できない、経済面にも問題がある - 自宅で出産してしまって、
どうすればいいのか分からない
……というような、
深刻な悩みや相談が、寄せられています。
ちなみに、相談については無料です。
電話やメール、面談など、
コンタクトの手段は様々です。
電話での相談が、多いです。
相談件数は激増しており、
熊本の慈恵病院に、全国から相談の電話が鳴りやみません。
2015年のデータでは、5000件以上の相談がありました。
実に、一日13件以上の相談を受けていた、と言う事です。
★相談から繋がる命もある
また、望まない妊娠をしてしまった方が、
慈恵病院に相談したことによって、
出産前から、養子縁組の手続きを進められる場合があります。
その場合は、赤ちゃんは生まれてすぐに、養子縁組が決まるパターンがあります。
2016年6月現在のデータとして、
慈恵病院に相談をしたことで、279組の養子縁組に繋がっています。
責任放棄であるという、
事実は変わりません。[/ふきだし]
■赤ちゃんはその後どうなるのか?
前述した通り、保護されたらすぐに、
健康状態に異常がないか、
病院で様々な検査を受けます。
異常があれば治療、入院に入ります。
健康が確認されれば、
児童相談所に委ねられます。
●母親から連絡があった場合
預けてしばらくは、
赤ちゃんは病院や施設にいます。
この期間に、もし母親から連絡があれば、
相談、面談を行った後、
今後をどうするのか、一緒に考えていきます。
また、この場合、
身元が分かるため、
戸籍は現在のまま、引き継がれます。
●母親からの連絡がない場合
もし母親から連絡がない場合は、
要保護児童として、
保護されることになります。
その場合は、戸籍がないため、
市長が名付け親になります。
そして、
赤ちゃん一人だけの戸籍となります。
身内はいません。
本当に一人だけの戸籍です。
頼れる身内が、
だれ一人いない…
本当の意味で、ひとりぼっち、
ですね…[/ふきだし]
その後、乳児院へ送られ、
生活をすることになります。
★乳児院とは
乳児院とは、いろんな事情があり、
家庭で生活する事が困難な、
0歳、1歳、2歳の子どもが生活する施設です。
(親の病気、離婚、家族関係、
経済理由 ネグレクト、虐待等)
2歳を過ぎても、
引き取り手がない場合があります。
その場合は、児童養護施設という、
家庭で生活できない3歳~18歳までの、
子ども達が過ごすの施設に移ります。
その後、里親や養子を待つことになりますが…
日本ではなかなか、上手くいかない現状です。
★里親と養子の違いって?
よく疑問としてあげられるのが、
里親と養子縁組の区別です。
超簡単に説明しますと、
- 里親=
他人の子どもを預かって生活する - 養子=
戸籍も親権も移り、
法律的に完全に我が子になる
と言う事です。
■関西にこうのとりのゆりかごを設置する理由
こうのとりのゆりかごを使うために、
関西から来て、赤ちゃんを預ける人が多いという事や、
関西の妊婦からの相談件数が多数ありました。
そのため、こうのとりのゆりかごが、
関西にも必要ではないか?
という意見が出たのが、
関西にこうのとりのゆりかごを、
設置することになったきっかけです。
これにより「こうのとりのゆりかご IN 関西」
という実行委員会が発足しました。
発足記念大会が2016年3月19日(土)に開催されています。
こうのとりのゆりかごの設置、運営を支援するための、
NPO法人が設立され、
現在、関西での開設に向けて、交渉が進められています。
参考ページ:
日本カトリック医師会
■こうのとりのゆりかごのモデルはドイツのベビークラッペ
こうのとりのゆりかごのモデルであり、
その原型となったのは、
ドイツのベビークラッペという施設です。
基本的に、日本と同じシステムです。
●ドイツのベビークラッペの仕組みとシステム
ベビークラッペは
匿名で赤ちゃんを預けるシステムです。
施設の扉を開けると、
暖められたベッドが置かれています。
このベッドの上には、
赤ちゃんの母親に宛てた手紙がおかれています。
この手紙をとり、
赤ちゃんをベッドの上に載せます。
そして、扉を閉めて、母親は帰ります。
この扉は、一度占めると、施錠され、
もう開ける事はできません。
赤ちゃんに、会えなくなってしまいます。
扉がしまり、赤ちゃんが預けられると、
センサーが反応して、警備会社のブザーが作動します。
すると、職員がかけつけて、
預けられた赤ちゃんを保護します。
その後、病院に連れていかれて、
健康状態や異常の有無を検査され、
必要に応じて、入院します。
その後、8週間の間は、里親が育てます。
しかし、8週間以内に
母親が名乗り出ることが無ければ、
そのまま実子として、養子縁組となります。
日本と違い、
育っていく家庭が、見つかりやすいのが特徴ですね。
★ドイツでは、胎児の権利というものが、謳われています。
「人間の尊厳は不可侵である。
これを尊重し、保護することは、
すべての国家権力の義務である。」
ということが、胎児にも適用されています。
★自宅での出産は極力させないドイツの方針
自宅での出産は、
母子ともに、身体に危険を及ぼします。
そのため、ドイツでは匿名でもいいから、
ちゃんとした施設で出産するよう、呼びかけているのです。
その後は、
マザーチャイルドハウスという施設で、
8週間生活した後、
自分で育てるのか、養子にするのかを決めます。
その後、子どもがどうなったかの割合としては…
- 自分で子どもを育てた…50%
- 養子縁組になった…45%
- 引き取り手がいなかった…残り数%
となっています。
ちなみに、引き取り手のない赤ちゃんについては、
重篤な障害児でした。
★日本とドイツの子どもに対する考えの違い
日本特有の考えとして、
「子どもは親の所有物」
と言う考えがとても強いです。
ドイツでは、
「子どもは社会のもの」
という考え方をしています。
社会全体で、育てていき、
社会全体で、教育していくという、
考え方、意識があるのですね。
■「こうのとりのゆりかご」賛否両論の内容
個人的に、メリットもデメリットも、
存在していると思います。
しかし、どちらをとるか…と聞かれたら、
私は救える命を救っていくほうが、いいと思っています。
どちらに重きを置くか、ですね。
設立当初から、世論は真っ二つです。
それらの理由は下記。
●賛成派、メリットについて
新生児が亡くなるのを防げるのが一番の意義です。
誰にも相談できずに、
生まれてしまったけど、
身元がばれるのがいやで、
自分で育てる事も、
預ける事もできないから、
置き去りにするしかない…
というようなパターンで失われる命を、
匿名で利用できる事によって、
救うことが出来る可能性が生まれます。
命を最優先にする、
という事をかんがえるのであれば、
意義があります。
●反対派、デメリットについて
モラルの低下が一番叫ばれています。
赤ちゃんポストという窓口があることで、
預かってくれるからいいやーと、
軽く考えた若者が、
軽率な行動をしてしまう可能性が、
高まるのではないかと言う声です。
これが、安易な子捨てに繋がるかもしれないし、
その可能性はゼロとは言い切れません。
最後の最後の、最終的な手段である、
「こうのとりのゆりかご」を、
一番最初の手段にしてはいけないのです。
●これから育つ子ども達に伝えていく事
赤ちゃんの命を守る事を、
一番最優先に考えて作られた、
こうのとりのゆりかご。
しかし、
なぜ、こうのとりのゆりかごを、
使わざるをえない状況に、
なってしまうのか。
いろんな原因があると思います。
自信のモラルが低く、
命を大切に考える力がない人が、
軽はずみな行動をしてしまう事もあれば、
本人に過失はなくとも、
何らかの複雑な事情で、被害を受けて、
窓口を使わなければいけない人もいます。
こんな悲しい事になってしまう、根本的な原因を、
取り除いていかないと、
だめだと思います。
保育者として…
根本的な原因を取り除いていけるような…
そんな育ち方ができるように、
子ども達と関わっていきたいです。
大切な事を伝えていけるような、
保育をしていきたいですね。[/ふきだし]
■次の記事→児童虐待の通報って義務?無視すると罪になるの?
参考サイト
慈恵病院公式サイト:こうのとりのゆりかごとは
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