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「ダメ!」「あかん!」その一言で、子どもの育ちが止まる─子どもを“考えない子”にしてしまう叱り方

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おもちゃの取り合いでケンカになったとき。
今にもかみつきやひっかきが起こりそうなとき。
危ないことをしようとしたとき。

つい、反射的に「ダメ!」「あかん!」と声をあげてしまったこと、ありませんか?
大人の側にも焦りや驚きがあるときほど、とっさに強い言葉が出てしまうのは、自然なことだと思います。

でも、ふと立ち止まって考えてみてほしいのです。

その「最初のひとこと」が、
子どもにどんなふうに届いているか、想像したことはありますか?
実はその瞬間、子どもの気持ちや考える力の扉を閉じてしまっているかもしれないのです。

あつみ先生は関西圏の保育園に務めております。
大人も子どもも意図せず日常的に「あかん」という言葉は使っているため、今回は「ダメ」に加えて「あかん」も取り上げております笑

目次(タップで移動)

■「ダメ」「あかん」が子どもの思考を止めてしまう理由とは?

咄嗟に出る禁止の言葉が、子どもの心の余白を奪ってしまうことがある。

「ダメ」「あかん」という言葉、つい口から出てしまいがち。
でもこの言葉、子どもにとっては「なんでダメなのか」が見えないまま、一方的に行動を否定される体験になります。

何がいけなかったのか、自分で考える余地もなく、
ただ「怒られた」という印象だけが強く残る。

その結果、
「これってどうだったかな?」ではなく
「怒られないようにしなきゃ」という顔色をうかがう反応が身についていくんです。

※補足しておきたいのは「ダメ」や「あかん」という言葉自体が“悪い言葉”というわけではないということ。どちらも日常的に使う言葉ですからね。
意識しなきゃいけないのが、その言葉を「子どもを従わせるための手段」として使ってしまってないかということです。

あつみ

制止させるときに、感情のままこの言葉をぶつけると、子どもにとっては“理由もわからず否定された”という印象だけが強く残ってしまいます。

■感情的に叱ると、子どもは“理由”より“怖さ”を記憶する

どれだけあとから説明しても、「大人が怒っていた」記憶ばかりが残ります。

たとえば、つい感情的に「ダメ!」「あかん!」と強い口調で叱ってしまったとき。
それは、大人の側からすれば「止めなきゃ」「分かってほしい」という思いの表れかもしれない。

でも子どもにとってはその瞬間、“内容”よりも“雰囲気”が先に心に残ってしまうんです。
その刺激の強さに、子どもの心はすぐに閉じてしまいます。

大人の表情、声のトーン、急に大きくなった声。
そうした“怖かった”という体験そのものが、記憶に強く刻まれてしまう。

そのあと、どれだけ「なんでダメだったか」を丁寧に説明したとしても、
子どもの心はすでにその説明を受け止める余裕を失っています。

「怒られた」という印象だけが残って、“考える時間”も、“理解しようとする気持ち”も、閉ざされてしまうのです。

だからこそ、伝える順番が大切。
まずは落ち着いた空気で、一緒に安心できる状態をつくる。

そのうえで、必要なことを「伝える」時間を持つ。
これだけで、子どもが受け取るものは大きく変わっていきます。

■叱る前に立ち止まるべき理由|“ダメ”と言う前の関わり方とは?

「ダメ!」「アカン!」ととっさに言う前に、ほんの数秒だけでも、立ち止まってみてほしいのです。
たとえば、子どもが危ないことをしようとしたときや、思いがけない行動をとったとき。
驚いたり焦ったりして、感情のまま強い言葉が出てしまうこと、ありますよね。

でもその瞬間、子どもの心はびっくりして、必要以上に刺激されてしまうことがあります。
泣き出してしまったり、かえって興奮したりすることも。

「ダメ」「アカン」で抑え込む前に、他の伝え方ができないかを考えてみる余白を持ってほしい。
たとえば——

  • そっと手を添えて止める
  • 子どもの目を見て、静かに名前を呼ぶ
  • 何も言わず、少しだけその場から引き離してみる

言葉がすぐに出なくても、無理に探す必要はありません。
まずは大人が落ち着いてそばにいるだけで、子どもは安心することもあるのです。

「どう言えばいいかわからない」
「この行動、止めなきゃ」

そう思ったときこそ、“とっさのダメ/アカン”に頼らず、
他の選択肢に気づける保育者でありたちですね。

感情的にならず、数秒の間をつくるだけで、子どもの反応も、自分の伝え方も、きっと変わってきます。

■こんな叱り方はNG?子どもを追い詰め心を閉ざしてしまう関わり

大人としてはまっとうに、正当に伝えているつもりでも、子どもの心に火を注いでしまうことがあります。
以下のような対応は、子どもの「考える力」ではなく、「怯える反応」ばかりを引き出してしまう原因になることも。

やってはいけない関わり方の例

泣いている子に理由を並べて説明し続ける

子どもは感情が高ぶっているとき、話の内容を冷静に理解することができません。

泣いているときの脳は、いわば「感情の嵐」の中。
その状態でいくら理由を伝えても、言葉は届かず、むしろストレスが増していきます。
大人の声も「攻撃」として感じてしまい、ますます心が閉じてしまうことも。

「なんでそんなことしたの?」と問い詰める

責められている感覚が強まり、「考える」よりも「防衛する」反応を引き出してしまいます。

子どもはまだ、自分の気持ちや行動をうまく言語化できません。
「どうして?」と詰められると、「わからない」「言えない」自分に焦りを感じ、余計にパニックになって泣いてしまったり、黙り込んでしまうこともあります。

あえて子どもを刺激するような言い方や語調で関わる

挑発的な態度や言葉は、子どもの“心の火”に油を注ぐことになります。

たとえば、わざと語気を強めたり、「そんなことで泣かない!」などと突き放すような言い方は、
子どもの感情をさらにエスカレートさせます。
子どもが落ち着くどころか、怒りや不安、悲しさが爆発してしまう可能性もあります。

上記のような対応をしてしまうと、子どもは「反省」するのではなく「委縮」してしまいます。

本当に大事なのは“考える力”を育てる関わりです。

もちろん、強く叱ることが必要な場面もあります。
でも、こうした“強すぎる関わり”では、反省ではなく「怖さ」しか残らない。

子どもの中に残るのは、「怒られないようにしなきゃ」という反応だけ。
それは“育ち”とはちがう方向なのです。

このように、それぞれの対応がもたらす影響を知っておくことで、
私たち大人の関わり方も、少しずつ変えていけるはずです。

■保育士の大きな声かけが、周りの子どもを不安にさせている

強い声かけが広げる“空気”は、子どもの安心感に大きく関わります。
保育現場でよくあるのが、ある子へのとっさの「ダメ!」「アカン!」という強い制止。

その瞬間、止めたい子どもには伝わったかもしれません。
でも実はその声、周りにいた他の子どもたちにも強く響いているんです。

空気がピリッと張りつめて、周囲の子がなんとなく落ち着かなくなる。
その緊張が伝染して、小さなトラブルが連鎖的に起きたり、事故やケガにつながったりすることも少なくありません。

先生の声って、それだけ空間全体に影響を与えているんです。

だからこそ、「この子に伝えたいこと」だけじゃなく、
“自分の声や言葉が、その場全体にどう作用するか”を少しだけ意識することが、とても大切なんです。

強い制止が本当に必要なときもあります。
でも毎回がそうでなくていい。

自分が落ち着いているだけで、子どもたち全体の空気が守られることもあるんです。

■「叱る」より「気持ちを聞く」ことが大切な場面もある

頭ごなしに注意するよりも、まずは子どもの気持ちに目を向けてあげたい。
たとえば、お友だちを噛んでしまったとき。

大人は「噛んだらダメでしょ!」と止めたくなるけれど、
噛んでしまった子にも、思いがあったはずです。

まずは気持ちに寄り添う言葉から。

  • 「かんじゃったの?」
  • 「なにかイヤなことあった?」

そうやって聞かれた子どもは、はじめは黙っているかもしれない。
でも、少しずつ気持ちがほどけていくと、ぽつりぽつりと理由を話しはじめることもあります。

そんなとき、まず一番大事なのは“共感”すること。

  • 「そうだったんだね」
  • 「そんなことがあったんだね」
  • 「〇〇がイヤだったね」
  • 「悲しかったんだね」

たったそれだけの言葉でも、
「気持ちをわかってくれた」という実感が、子どもの心に深く残ります。

そのあとに、
「〇〇ちゃん、泣いてたね。イヤだったかもしれないね」
と、相手の気持ちにも触れる。
この順番がとても大切です。

これだけで、子どもにはちゃんと伝わります。
何度も繰り返したり、説教を続ける必要はありません。

気持ちを否定されずに受け止められた子は、
相手の気持ちにも自然と目を向けられ、気づけるようになります。

気持ちを共有しあう数秒のやりとりが、思いやりの芽を育てていきます。

■「ダメ!」で止める関わりは、子どもの“考える力”が育たない

叱ることが目的じゃなくて「育てる関わり」になっているかを、立ち止まって見つめ直したい。

「ダメ!」「あかん!」

その一言で、子どもは行動を止めるかもしれません。
でも、本当に止めたいのは“その行動”だけであって、
気持ちや考える力まで止めたいわけじゃないはずです。

子どもには「なんでだろう?」と考える力があります。
「どうしたらよかったかな?」と気づいていく力もあります。

けれど、頭ごなしに止められてしまうと、
その力は少しずつ働かなくなっていきます。

「叱られないように」「怒られないように」

そんなふうに大人の顔色ばかり見るようになってしまったら、それは“育ち”ではなくなってしまう。

だからこそ、すぐに「ダメ!」で片付けてしまう前に、一呼吸おいて、
少しだけ気持ちに目を向けて、別の言葉を選んでみる。

そのたった数秒の関わりの中に、
子どもが“自分で考える力”を育てる種があるのだと思います。

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あつみ

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