じたばたと地を這うように、もがくように、飛び立とうとするアゲハチョウ。
しかし、どれだけ繰り返しても、風をとらえる事は出来ず、太陽の光には近づけない。
幾度、地面に体を叩きつけ、それでも諦めようとしない。
秋ごろから保育園で、子ども達と一緒に観察してきたアゲハチョウの幼虫。
蛹になって、冬を越え、暖かい春になってようやく羽化した。
子ども達は、アゲハチョウが飛び立つ事を楽しみにしていただろう。
アゲハチョウ自身も、蛹の中で長い冬を眠る間、春の空を飛びまわる夢を見ていただろう。
飛ぶことが出来ると信じ、諦めずに何度も羽ばたこうとするアゲハチョウの姿
その願いが叶う事も知らない、そして絶望する事も知らない、その前向きさは、見守る私の胸を痛く締め付けるのだ…
その時、私も、子どもも、同じ光景を見ているという事に気づいたのだ。
羽化不全は自然の摂理・自然淘汰・弱肉強食と分かりながらも…
自然・生命に触れる事を通して、子ども達と心が通じ合ったように思うのだ。
こんばんは!
男性保育士のあつみです。
この記事では、羽化不全のアゲハチョウの飼育方法についてお伝えしています。
とは言うのも、保育園で飼育していたアゲハチョウの蛹が、新年度に入って羽化しました。
…が、羽化が失敗して羽が伸びきらず、空を飛ぶ事が出来ない個体でした。
この記事の前半では、飼育に必要なものと方法・やり方をお伝えします。
後半では、実際に蛹から羽化してからの飼育~寿命・体力が尽きて死ぬまでの経過を写真付きで記録していますのでご参考くださいね。
この記事を書いた人
あつみ先生
保育士/幼稚園教諭/保育教諭|現役8年目|今年は0歳児担任|SNSフォロワー累計17000人↑|見てきた子ども達は250人↑|保育士ライター(MAMADAYS/ほいくらいふ等)|書籍出版「保育製作365日/100均知育365日」|30万PV保育士ブロガー|ピンタレスト月間250万PV|離乳食インストラクター4期卒セミナー講師|詳しいプロフィールはこちら
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■羽化不全のアゲハチョウの飼育方法
この記事の内容は下記になります。
- アゲハチョウの寿命
- アゲハチョウのエサ
- アゲハチョウの飼育環境
- 羽化不全にならないように気を付ける事
- 実際に絶命するまで飼育したレポート
これらについてお伝えします。
●羽化不全のアゲハチョウの寿命
■アゲハチョウの寿命:2~3週間程度
環境や個体差もありますが、寿命は2週間~3週間ほどの、短い期間です。
ただ、羽化不全の個体は、体が弱い事もありますので、この通りとは限りません。
また、何度も飛ぼうとして、体力を消耗すればするだけ、寿命も短くなります。
★アゲハチョウの体力を消耗しないようにする工夫
基本的にアゲハチョウは、周りの環境が明るいと、光に向かって飛ぼうとする傾向があります。
なので、長生きさせたい場合は、なるべく暗い、静かなところで飼育するのが適しています。
また、暖かい環境だと活発に活動するようになるので、なるべく気温の低い場所のほうが、体力の消耗が減ります。
●羽化不全のアゲハチョウのエサ
■エサ:ポカリやハチミツを薄めた物
アゲハチョウは、ハチミツや、スポーツドリンクを水で薄めたものを飲みます。
私は今回、両方とも用意してみましたが、よく飲んだのはハチミツを水で薄めた物です。
脱脂綿やティッシュペーパーなどに、たっぷりと含ませて、与えます。
ベチャベチャになるまで、結構な水分量を含ませないと、なかなか飲んでくれませんでした。
★アゲハチョウにエサをあげる時のコツ
チョウや蛾って、口吻(こうふん)と呼ばれるストロー状の器官がついており、そこから水分を摂取します。
普段はくるくると巻かれているのですが、エサを食べる時に、これ伸びます。
ただ、アゲハチョウさん、あまり自分からエサを食べにいきません。
放っておいたら何も食べない…という事もあるかもしれませんので、エサに誘導してあげる必要があります。
その上で、口吻(こうふん:ストロー状の器官)を、エサに近づけてあげる事で、ようやく食事を始める、という工夫をしてあげる必要があります。
つまようじなど、細いものを巻かれている口吻に差し込み、えさに向かって伸ばしてあげましょう。
(このエサをあげるための援助・誘導は、子どもではなく大人がしてあげてくださいね)
●飼育環境・洗濯ネットがベスト
チョウの特徴としまして、羽を動かし、バタバタと暴れまわる特徴があります。
その際、どうしても勢いがつき、周りの障害物にぶつかってしまいます。
固いものにぶつかると、アゲハチョウの体にダメージがあるため、体力が消耗し・寿命が縮まります。
よって、固く、狭い飼育ケースは、適しておりません。
暴れて、ぶつかっても痛くないように、ダメージが少ないようにしてあげる工夫があります。
それに適しているのは、ワイヤーを内蔵した、箱型の洗濯ネットです。
必ずしも洗濯ネットでなくてはいけない、と言う事ではないのですが、チョウの特徴を理解して、環境を設定してあげてくださいね。
■羽化不全(羽化失敗)の原因と、対策方法
羽化不全の原因って、先天的にも後天的にも、様々な原因があります。
羽化不全を防ぐためには、何よりも幼虫時代も蛹の時も、丁寧に扱うのが鉄則になります。
- 幼虫時代に触りすぎてしまって、ストレスや病気になってしまったり…
- さなぎになろうとしている時に、落下したりケガをして、ダメージを負ったままさなぎになったり…
- さなぎになってから、触ってしまったり、衝撃を加えてしまったり…
非常にデリケートですので、無理に力をかけない事が必要です。
虫全般に言えることなのですが、彼らは思ったより脆いし弱いです。
あおむしに限らず、虫は「掴む」というイメージで接しいていると、すぐに弱らせて死んでしまいます。
「手に乗せる」というイメージで、触れ合うのがベターですよ。
■羽化から保護しアゲハチョウの寿命を迎えるまで
今回飼育した個体は、一見、羽が開いているように見えますが4枚中2枚の下の羽根が、内側に折れ曲がり、歪んでいます。
4月3日の午前中、遊んでいる時に、すでに羽化している事に気づき、子ども達と観察。
羽が歪んでいましたが、これくらいなら飛べるかな…と思って、午前中に園庭に放しました。
お昼寝開け、園庭でまた、じたばたとしているのを子ども達が発見。
もがくように飛ぼうとするのですが、一向に飛び立つ事は出来ない様子でした。
まだ羽化したてで、飛ぶのが下手なのかもしれないと思い、一日時間を置きますが、翌日もまだ園庭に居り、飛ぶ事は出来ない様子でした。
飛びあがっても、飛び続けることが出来ない、という感じです。
かわいそうなので保護し、見守ることに。
●4月4日:羽化したアゲハチョウを保護
とりあえず保護、やはり飛ぶ事はできない様子。
全力で羽を羽ばたかせるが、おぼつかない。
すごく元気で、飛ぼうという気持ちが伝わってきて、とても前向きなんですが…
その様子を見ていると悲しい…
前述した通り、チョウの飼育にはワイヤーつきの洗濯ネットがベターなのですが、一時的に飼育ケースで隔離。
やわらかい布で側面を保護しております。
●4月5日:アゲハチョウのエサづくり(ハチミツとポカリ)
アゲハチョウの食事、エサはスポーツドリンクや、はちみつを薄めたものになります。
今回は、ハチミツやスポドリ、両方用意しました。
ペットボトルキャップをえさ皿に活用しました。
今回、ティッシュペーパーに、たっぷりと染み込ませています。
上記の画像、写真では分かりにくいですが、ひたひたになるまで、結構な量を染み込ませるほうがいいと思います。
ちなみに、アゲハさん、自分では全然食べに行かないので、エサまで誘導してあげる必要があります。
また、エサの場所まで誘導しても、なかなか口吻(こうふん:ストロー状の口の事)を伸ばそうとしない事もあります。
その際は、つまようじなど細い棒状のもので、ストロー状の口吻を伸ばして、誘導してあげました。
すると、ようやく吸い始めます。
ふわふわの体、おおきな目、一生懸命テクテク歩くアゲハチョウが、顔を動かしてごくごく飲んでいる姿は、とってもかわいいです。
虫好きの人は癒されると思いますよ。
●4月6日:室内で、思うように動けるようにしてあげる
エサを食べた後は体力回復するのか、エンジンがかかるようで、しきりに羽をパタパタさせ、飛ぼうとするアゲハチョウさん。
「絶対に飛んでやる!」という前向きさが、私の胸を締め付けるんです。
ただの本能かもしれませんが、飛びたいという強い思いを感じます。
今回、羽化不全の個体の飼育をしていますが、今回の目的は、別に長生きさせる事ではありません。
アゲハチョウの意思を尊重しようという事になり、室内だけでも、自由に動ける時間をとってあげる事にしました。
いろんな所に上って、上から飛び降り、飛ぶ練習をしているようでした。
しかし、やっぱり不安定でフラフラ、すぐ落下…
なんどか練習したら、疲れるのか、羽を休めていました。
●4月9日:毎日はエサを食べてくれない
毎日、エサに誘導しますが、2~3日おきにしか食べてくれません。
もし、見ていない時にちゃんと食べてくれていたらいいのですが、毎日の食事は必要ないのでしょうか。
●4月12日:ハチミツのほうがお好みの様子
何度かエサをあげる事を繰り返していたのですが、ハチミツのほうが食いつきが良い事に気づきました。
もちろん、個体差はあるかもしれませんが、スポドリはスルーして、ハチミツに食いついています。
やはり自然由来のものが好きなのか
●4月15日:アゲハチョウの足がもげている
数日前から、6本の足の中、一本が動きづらそう、一節目が稼働してないような感じがあったのですが、足が一本もげているのを確認。
また、ふわふわだった毛のツヤも、だんだんハリが無くなってきています。
寿命がもうすぐなのかなあ…と思いつつも、やっぱりアゲハチョウの本能なのか、エサを食べたあとは、パタパタと全力で羽を羽ばたかせる。
どこまでも、飛びたいと思っているし、飛べると信じているようです。
●4月22日:命尽きるまで、手足は動かずとも羽は動く
この日、確認すると、ひっくり返っているのを確認。
ただ、まだ生きているようで、かすかに触覚と口吻が動いています。
手に取ってあげると、それでも羽はパタパタと、動かそうとする。
既に、手足はもうかすかに動くのみ、つかまる力もない様子でした。
でも、足は動かなくとも、羽だけは、最後まで動いていました。
その力強さから、生への執着を感じます…
「死にたくない、飛びたい」と最後まで叫んでいるようで、
分かっちゃいるが、それでも死にゆく・死に向かう時間というものは悲しいものです。
しばらくパタパタと羽を動かした後は、しばらく静かになります。
そして、体力を少し回復させると、再び羽を全力で羽ばたかせようとします。
もちろん、その思いは叶う事なく、じたばたともがくだけに終わります。
その繰り返し…最後の力を振り絞っている様子でした。
動きはどんどん小さくなっていき、羽も動かせなくなりました。
口吻がピクピクと、動いているだけ…
命尽きるまで見守ってあげたいけれど、やらねばならない活動があるため、見守るのは一時間ほどで切り上げ。
(1時間もよく観察してたな…)
数時間後、絶命したのを確認して、庭の一角に土葬しました。
■小さい命から学び感じてほしい事
羽化不全って、本当に気の毒です。
ただ、自然界では羽化不全は、一定の割合である事です。
自然の摂理です。
今回、観察したチョウは、去年の秋から飼育・観察し、冬眠した蛹から生まれたチョウです。
経過を観察し続けているうちに春がやってきて、子ども達も進級しました。
ちなみに、アゲハの観察ってのは半ば僕が、勝手にしていることです。
クラス単位で飼育って方法はとってないんです。
毎年、私がみんなで観察できるように設定しており、クラスや年齢関係なく、興味がある子が好きなように観察できるような環境にしてます。
今回の、飛べないアゲハチョウを見て、声をかけてきた子は、去年から一緒に観察してきた子です。
季節を越え、一緒に観察してきた子ども達も、どんな姿になって羽化するのか、本当にチョウチョウになるのか、期待し楽しみにしていたと思います。
私としては、子ども達自身に、冬を越え、春になって飛び立っていく、生き物の神秘性というか、尊さを感じてほしいと思ってます。
小さな命を可愛いと感じて見守っていくのって、とても学びがある事だと思うからです。
●飛べないチョウチョウがいるという事実
私はこの記事を書いている時点で保育士5年目に突入しまして、毎年アゲハチョウの幼虫の飼育は行っておりました。
その中で運が良かったのかどうかは分かりませんが「羽化不全のアゲハチョウ」を子ども達と一緒に見た事は、まだありませんでした。
もちろん、羽化不全ってのは一定の割合で起こります。
先天的にも後天的にもいろんな原因がありますが、それが起こるのは当然の事です。
しかし、今回子ども達と一緒に「羽化不全のアゲハチョウ」を見たのは初めてでしたので、どう説明しようか、どう伝えようか、迷いました。
果たして、どう感じてくれたのでしょうか。
それは子ども達に委ねようと思いますが…
個人的には、とても気の毒だと感じるのが素直な気持ちで、やっぱり悲しいんです。
●小さな命に触れることで学べる事
個人的には、子ども達が、飛ぼうとするチョウの姿を見て、
「かわいそう」と思ってくれたこと、これだけでも、十分だと思いました。
冬を越えて、季節をまたいでお世話する意味があったなと思うわけです。
子ども達には、その価値感を大切にしてほしいです。
小さな命の観察・触れ合いってのは、学び以上に、得る事が多いと考えているからです。
こんな小さな生き物が、生きている。食事してる。
それが、神秘的で不思議な事だと感じられる。
この小さな虫が、何を考えているのかは分からないけど、想像してみる。
見返りを期待せずに、愛着を持ってお世話をする。
別に、生き物の飼育なんて、してもだれも褒めてくれません。
ただ、小さな命を目の前に、子どもなりに考える事・思う事があると思うんです。
物言わぬ花や植物、言葉の通じない虫や生き物に興味を寄せてみる事こそ、上辺だけでない、本質的な、本当の相手を思う・考える心の土台が育つと思うんです。
小さないろんな生き物を見るということは、視野が広がります。
いろんな生き物が同じ世界にいる事が、実感でき、それを認められるようになります。
日常の中に、小さな世界がある事をたくさん知れます。
小さくても、広い世界がたくさんあると気づけます。
見えるもの、気づけることが、めちゃくちゃ増えます。
自然というのは、それを教えてくれる。
解釈の違いや誤解がある事を承知で、一番簡単な言葉で、乱暴にまとめますと…
生き物の観察や飼育を通して「やさしくなれる」のだと思ってます。
(これは完全にあつみ先生の個人的な考えですが)
単純な興味性や学びという観点だけでなく、それ以上に大切な事を感じられると思ってます。
だから、子ども達には、生き物とたくさん触れ合ってほしいんです。
そう願って、子ども達の周りの環境を作っています。
私が受け持つクラスの子ども達は一年後、問答無用で虫好き・生き物好きにする自信があります笑
虫が苦手な保育者や保護者には申し訳ないのですが笑
やっぱり私の中で自然や生き物との関わりってのは、軸になってるんです。
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